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広島地方裁判所 昭和44年(わ)150号 判決 1969年5月02日

主文

被告人を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

押収してある運転免許証一通(昭和四四年押第四五号の一)の偽造部分を没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和三八年五月二〇日午後九時三〇分ごろ大型ダンブカーを運転して広島県高田郡八千代町大字勝田、吉田警察署勝田駐在所前国道にさしかかるや、同所において折から夜間交通取締中の同警察署勤務司法巡査木村正道に対し、広島県公安委員会作成の上野種男に対する大型自動車第二種運転免許証一通(第二三、二二二号)の写真欄に貼布してある右上野の写真を自己の写真に貼りかえて偽造してある右運転免許証を、その偽造であることの情を知りながら、あたかも真正に成立したものの如く装つて呈示して行使したものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)<省略>

(一部免訴の理由)

本件公訴事実中、有印公文書偽造の点の要旨は、

被告人は昭和三七年二月上旬ごろ、広島市昭和町六三二番地の自宅において行使の目的をもつて、ほしいままにかねて入手していた広島県公安委員会作成の上野種男に対する大型自動車第二種運転免許証の写真欄に貼布されていた右上野の写真を剥離し、同写真欄に自己の写真を貼布して、あたかも自己が右運転免許証の交付をうけた上野種男であるかのような外観を呈する右公安委員会の記名押印のある右自動車運転免許証一通を偽造したものである。

というのであるが、<証拠>によると右有印公文書偽造行為は昭和三七年二月上旬ごろ行なわれたものであり、一方本件公訴提起は昭和四四年三月一四日であることは当裁判所に顕著な事実であり、公訴時効七年を経過していることが明らかであるから刑事訴訟法三三七条四号により被告人の右所為は免訴すべきところ、判示偽造公文書行使の罪と手段・結果の関係にあるものとして起訴されたものと認められるから、主文において特に免訴の言渡をしない。

なお附言すれば右の如き牽連犯の公訴時効につき、行使の時点を基準とし、重い罪の刑の時効によつて起算すべしとの考え方があるが、牽連犯の如き本質上数罪(科刑上一罪と言われるが、改正刑法準備草案では一罪として扱われていない。)を、公訴時効の点についても一罪と観念しなければならない理由はなく(この点については手段・結果たる行為の間に確定判決があつた場合、別個に般断すべしとする考え方が参考となる)、本件の如く結果たる行為(行為罪)が手段たる行為(偽造罪)の一年余の後に行なわれた場合、応報感情の消滅、証拠の散逸その他公訴時効の本質を如何に理解するにせよ、それぞれの行為ごとに別個に考えられるのであり、客観的行為をまつたく別にする牽連犯(同じ科刑上一罪と言われる観念的競合の場合は暫らく措くとしても)は、公訴時効については各別に起算すべきものと考える。

よつて主文のとおり判決する。(高橋文恵 青山高一 安原浩)

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